10年


今日で私の人生が変わってから10年が経った。


10年前の6月14日。

確か、天気があまり良くなくて雨が降ったり曇ったり、でも教室中は雨は降らなかった気がする。


あの日はマリノス選手会主催のサッカー教室があって、私は運良く参加することができた。


会場は日産スタジアム


受付けをしたら赤色のキャプテンマークを渡されて、「赤チームだよ」と教えられた。

そのキャプテンマークには7人のサインが小さく入っていて、マリノスの選手を知らなかった当時の私は誰が誰だかもよく分からず。


時間になって日産スタジアムの下で待機。

チームカラー順に並ぶと私はなぜか1番前。

友達は別のチームで周りに知っている人は誰もいない。


するとわらわらと大人が入ってきた。

若そうな人達、みんな茶髪だ。


「どっちが最初に入る?」


ぼーっと後ろを見ていた私は声に気づいて振り返った。すると目の前には白いキャップを被った大きな男の人。

手首にタトゥーが彫られていることに気づいた私は完璧固まったと思う。


隣に立っていた男の子が「先に行って」と言って私は本当に1番前になった。


「じゃぁ、隣の人と手を繋いで〜!」


白いキャップを被った人が後ろに向かって叫ぶ。


私は誰と手を繋ぐのだろう、この人はきっとサッカー選手だろうな、足首にもタトゥーあるじゃん。そんなことを思っていると


「じゃぁ、行こっか」


笑顔で手を差し出してくれる男の人。

あ、全然怖くない人だ。

私は差し出された左手を握って階段を上る。


親達は観客席で最初待機していた。

この前、当時のビデオを見ていたら

「え、先頭にいるのそうじゃない?」

「嘘!!手繋いでる!!」

「ぴちゃん、手繋いでるよ!!」

緊張でガチガチの私を映しながら、母親と友達のお母さん達がキャーキャーしていた。

母親はサッカーが好きだったから選手のことも知っていたのだ。


チーム写真を取ったり、全体の話を聞いたりしてからチームごとに分かれた。


選手が着ているTシャツには背番号と名前が前にも後ろにもプリントされていて、『田代って初めて見たな』とかそんなこと考えていた気がする。


「じゃぁ、ニックネームで覚えていこう」


名前の一部の人もいれば、全く関係ない人もいて。

私は”マムシ”ってニックネームが結構気に入っていたよ。


一通りニックネームを覚えてから色んな話を聞いた。

その中でも覚えてくれてるのが

「全部を頑張らなくていい。でも、何かひとつ胸張って頑張ったと言えることをしようね」

という言葉。

私が今でも何かをしなければいけない時に心の中で復唱している言葉だ。


大人になった今でも支えになっている。


そのあとは練習をして、他チームと試合をして、あっという間に時間は過ぎた。


最後は全員で選手会長の話を聞いた。

全部が終わると「プレゼントがあるから、キャプテンマークの裏を見てね」と言われて言われた通り裏を見ると数字が書いてあった。

近くの選手に伝えると袋に入ったプレゼントをくれた。


それぞれ違うプレゼントで、私のは軽くて柔らかい何か。

その場で見ようと思っても紐がガムテープで留まっていて固くて開けられなかった。



集合写真を撮る時は好きな選手のところに行っていいよと言われて、私は田代選手の隣に座った。

あの時言った『一緒に写真撮りたい』はもう二度と誰にも言えないと思う。

そんな私の左隣には「じゃぁ、俺はぴちゃんの隣で撮ろ〜」と言って寝転がった小椋選手。


全部が終わって帰る時エレベーターで友達に会った。

彼は誰かのサイン入りスパイクを貰っていて、急いで自分のガムテープ引きちぎった。

中から出てきたのは青くて大きいTシャツ。


Tシャツには「3 まつだ」とプリントされていて、サインと日付けが書いてあった。


『マツのTシャツだ〜!』


私がいた赤チームのリーダー。

そして手を繋いだ男の人。

当時の選手会会長”松田直樹”だった。



2009年6月14日。

私がマリノスを好きになって

凄く大きな目に見える変化ではないけど、確実に自分の中で何かが変わった大切な日。


絶対この先も忘れることはない大切な思い出。


松田、私は松田に出会えて本当によかったよ。

ありがとう。


19.6.14